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2006.04.30

寄る年波。

禿げる夢をたて続けに見た。

いずれも目が覚める直前の夢だから生々しいほどにリアルである。ふと鏡を見ると、額から頭頂部にかけてごっそり髪が抜け落ちているのだ。

範囲としては月代のような感じで、耳の上の両サイドは残っている。落ち武者の風情。けれど禿げた部分はつるつると美しくはない。1センチ四方に20本くらいはまばらに生えていて、地肌にはところどころ老人斑のような5ミリ大の黒茶色のできものがある。老人斑と違うところはそれがわずかに盛り上がっていることだ。張りはなく、皺のよった、ほくろのようなできもの。

子細に観察しながら、わたしは泣きそうになっている。不妊治療のせいだろうか、ホルモンのバランスが崩れているのだろうか、と考える。そんな醜悪な頭皮の下にあるわたしの顔はあまりに間抜けで、こんな間抜けだから禿げたんだろうかと理不尽なことも考える。

いっそのことぜんぶ剃り落としてしまおう、とも思うが、できもののことが気にかかる。髪を落としてもこのできものは消えることはないだろう。剃るときに引っかかったらいかにも痛そうだ。

……などとあれこれ考えるうちに、目が覚める。あれは夢だと分かっていながら、おそろしくて、頭に手をやれない。髪に触ったとたんごっそり抜けてきたらどうしよう。のそのそ洗面所に向かい、おそるおそる鏡を見て、ようやく、ほんとに夢だったんだ、と安堵する。

「歯が抜ける夢は肉親の不幸の前ぶれ」と、どこかで読んだ。もとより夢占いなど信じてはいないが、こうも同じ禿の夢を続けて見るとどうにも落ち着かない。「夢とは無意識下での記憶の整理である」、とは科学的な話であるが、わたしはいったいどこであんな皮膚を見たのだろう。まったく身に覚えがないのだ。


昨夜のこと。
湯上がりに化粧水を叩きながら鏡を覗き込んでいたら、頭頂部に近い分け目の部分に、4センチほどの白髪を発見した。短いものだから、天に向かってぴんと立っている。

あら、とつまんで抜こうとするが、すべってしまってなかなかうまくいかない。爪を立ててぎゅっとやったら、抜けないばかりか今度はくるりとカールしてしまった。

根元2センチほどを残して、先の半分が直径4ミリほどのループになって巻いている。うむ。なにかを受信できそうな案配だ。頭のてっぺんに、白いアンテナを載せたわたし。

無精をせずにはじめっから毛抜きを使えばよかった、と思いながら、バスタオルを巻いて取りに行ったのは毛抜きではなく携帯電話。とりあえずアンテナの記念撮影をしたのち、そうだこういうときには夫に頼ろう、と思いついた。

夫はにやにやしながら抜いてくれた。しかし、当の白髪だけではなく隣の黒い髪まで一緒に抜いてしまったため、わたしに禿の悪夢を思い出させてしまった。

もう一度、鏡に向かって頭皮のあたりをしげしげ観察してみた。いまのところ、健康なようだ。密生した黒髪にそっと手櫛を入れ、軽く引っ張ってみた。よし、大丈夫。

どうかこのまま、できるだけの本数を保って白くなってくれますように。もともとデコッパチのわたしである。「後退」という言葉には敏感だ。「M字」と言えば「開脚」ではなく「禿」だし、「薄い紙」はもれなく「薄い髪」と聞こえる。そうか、こんなにくよくよしてるから、あんな夢を見てしまうのだ。なるほど。

もっと、おおらかに。生きていこうよな。うん。

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